2014年10月29日水曜日

SpiralLink

 ニュースが出たのでご存知の方も多いかと思いますが90年初頭、フジテレビの”アインシュタイン”や後の”ウゴウゴルーガ”などでアミガを駆使して作ったCGアニメや線画アニメを作り、その後各方面で精力的に活躍しておられたCG&アニメ作家”秋元きつね”氏が彼の地へ旅立ってしまった。知り合ってから約20年経つけど、近年は一緒にお仕事も出来たり、久しく行ってなかった彼のライブに行くこともあり、最初に話を耳にした時は「絶対何かの間違いだ。」と思いたかったけど、どうやらほんとのようだと知った時、ああ、脱力ってこういうことなんだ…って自分でもびっくりするくらいふにゃふにゃになった。ご葬儀から日も明けたのでおいらのきつねっちの思い出話を書こうと思う。

 アインシュタインなんかは視聴者の立場で見ていた。ウゴウゴルーガも「なんぞこれwww超カオスでオモロイんだけどww」って仕事帰りの妙なテンションの早朝、それこそ寝る前に見ていた。供番組なはずなのになんでかマニアックなネタだったり当時流行りの「ビデオドラッグ」的なあの感じ。トノサマやがんばれまさおくんを作ってるのがまさか同年代というか自分より年下の人だったなんて!

 まにきゅあ団を手伝うことになってしばらくして正式メンバーになった頃だろうか。ボーカルのmaimaiから「きつねさんでーす!」と紹介されたその人こそ秋元きつね(秀一)さんだった。
 ウゴウゴルーガの中でも「がんばれまさおくん」が大好きだったおいらはほんとに嬉しくて、知り合った当時に出した彼の自主制作CD(1995年製)とかも持ってたりする。そして、今日なんとなく懐かしくて引っ張りだしてみたら…
おいらまさおくん描いてもらってたんだね。開けるまで忘れてた。そして最初は秋元さんとかきつねさんとか呼んでたのに誰が言い出したんだったか自分の周りでは彼の呼び方が「きつねっち」になってた。
きつねっちのサインはいつかもらっとかないと!って思ってたけど、おいら最初にちゃっかりもらってたんだね。なんかコレを見たらまたすっげえ泣けてきたよ。
今では当たり前になったライブと映像の演出を、今から20年前に完全シンクロでプレイしていたのがきつねっちがやっていたHz(ヘルツ)というユニットだった。
当時はMIDIのキー信号に割り当てた映像をポン出しシーケンスするっていうのをAMIGAのツールでやってたんだよね確か。 なんってソフトだったっけなぁ。
 まさに今まで見たことのない映像と音楽の完全シンクロのライブ。とても感動したのを覚えている。とにかく「一度見てみて!絶対面白いから!」と人に勧めたくなるようなライブだった。  


その後、色々縁は続き一緒にライブの対バンなんかをやったりもしていた。インディーズのCDにも参加してもらったり、こっちが協力したりとかもしていた。そんなこんなで知り合ってからずーいぶんと時間も経ち、久しぶりにHzのライブがあった時の酒の席で「いつか一緒にできたらおもしろいよね〜!」って言ってはいたけど、お互い本業同士で関わることが無かったんだよね。そんなところに、彼の係るアニメの音を担当してもらえないかってことでお話があってお仕事を一緒にすることになった。 当初は自分はちょこっとだけお手伝いって感じだったのがいつの間にかかなり音全体に関わることになった。

 この仕事が自分では久しぶりのMAの仕事で、とにかくキビシイけどとても心地良かった。ちょうどスタッフが同世代ってのも大きかったけど、なんっていうんだろうな、みんな全然仕事ジャンル的なベクトルが違うのに、お笑いはドリフで育ってSF映画はもちろんはスター・ウォーズ。っていうそんなメンツなのでなんかまとまるっていうかw
そんな感じだった。
ほんとにただのバンドつながりじゃなくお互いの本業で一作品作れたのは本当に嬉しかった。こっちは最大限空気読んで音つけるんだけど、彼のイメージとちょっと離れることがあっても、それが「あ、こっちがいいじゃん!」って思えばOKだし、「やっぱりこうしたい!」っていうのがあれば、それはちゃんと意味がわかる説明もしてくれるのでこっちも応えられた。

 こういうのがね、今ほんと少ないんですよ。ちゃんと頭ン中にビジョンがある人って。

 多分だけど…彼の無茶ぶりオーダー、宇宙空間を飛ぶ”う◯こ”の音をスターなにがしのタ◯ファイターみたいにしたい!
っていうのに応えられたのはおいらだけだといまだに自負している。


 その縁で、また彼が個人的に作るアニメにも関わることがあって、これもまたやってておもしろくて、作りながらニヤニヤして、「はははそう来たかww じゃあこっちはこうしようw」的なやりあいもできてほんとに楽しかった。そんな時だったかな、彼が言ったことですごく「あぁ、なるほど…」って思ったことがあった。

 その話をものすごーく大まかに略すると「
超高級CGはPixerやらハリウッドにでも任せて自分はお手軽に出来る事で面白いものをいっぱい作りたい。」と。いくらすごいポリゴン数使ってキレーなテクスチャ貼ってすげえモーション使っても「ぷww今んトコCGでしょ?ww」って思うようなもん時間かけて作るんだったら、最初からニセモノってわかっててあり得ない動きとかさせたほうがいいし、モデリング超がんばってもビミョーならとにかく何かを認識できるってレベルでいいじゃん?と。

 本当に、あんなに技術的に最先端なことをしておきながら非常におバカでアホなことを真剣に作る人はきつねっち以外居ないだろう。とおいらは思ってる。
さっき何年ぶりかに見た彼の最初のCD”SpiralLink”。直訳で”螺旋の関係”。彼のお別れの会の際、一方的に知ってる人、本当に知ってる人、お話では知ってる人、等、とても知っている方が多かったんだよね。自分にとってはみんな彼を通じて知っている方々。あぁ…これこそ彼が与えてくれたスパイラルリンクだと。そう思わざるを得ない夜でした。
きつねっち、またね。あっちでもまた音付けさせてよね。